労組嫌い

サラリーマンは、組合のある会社に勤めているより組合のない会社に勤めている方が圧倒的に多いので、組合嫌いの人が随分いるのではないでしょうか。私は20歳の時、一年半ぐらい松下電器産業のバッテリー工場で臨時工として働いたことがあります。現在で云えば、期間工と言えるでしょう。勿論正社員でなく会社の都合でいつでも首を切られる条件は同じです。その後外資系会社に就職し、一匹狼のように転々として外資系五社を渡り歩いて定年です。そのため組合員の体験などしたことがないから、組合など大嫌いです。組合など圧力団体以外のなにものでもない。

私が松下電器産業の臨時工とした働いた体験から言うと、臨時工のほとんどが二十代前後の若者ですが、二つのタイプに別れます。まともな奴とまともじゃない奴に別れます。まともじゃない奴とは、若いくせに向上心というものがいっさいない。安い月給をもらい給料日になれば安い焼き鳥などを食べ、安酒をあおり、女の子のおしりを追いかけまわすだけ。一方まともな奴とは、なんとか臨時工という身分から脱出しよと多少なりとも努力するタイプ。このタイプには二つにわかれます。自分が臨時工などという下層階級に属するような仕事をしているというのは、資本家が労働者を搾取するからだという経営者批判で組合擁護派タイプ。もう一方は、自分が臨時工などしているのは、自分に能力がなく努力不足だからとして経営者批判より労働組合に批判を向けるタイプ。私もそのタイプでした。だってそうでしょう。労働組合は、働く仲間の組織といいながら、労働者の中に平然と正社員と非正社員という階級社会を生じるのを容認しているのだ。いつでも首を切れる仲間を作っておいて自分たちだけはできるだけ安泰でいようとするのが労働組合でしょう。組合幹部は偽善者です。

労働組合は、組織を動員して政治家を誕生させ政界に送り込み、その政治家は国家のためより労働組合のためにだけ働くだけ、組合に加盟していない労働者など全く眼中にない。毎年四月の賃上げ交渉シーズンになると派遣社員の時給上げを要求しますが、それは全くジェスチャーだけです。現在の組合は圧力団体であり、組合幹部も組合出身の政治家も労働貴族といわれて久しい。それでも私企業の組合の場合、組合がどんな力を持ち、どんな傍若無人な振舞いをしようとその企業が潰れる可能性があります。これまでに大企業の倒産の原因の一つに組合ののさばりすぎがあげられるケースが多々あります。アメリカの自動車メーカーGMの倒産もそうでたし、最近の日本航空は会社更生法の適用下にあります。日産も経営不振で何人も日本人社長を代えたが、強力な組合が存在したため成功せず、結局ルノーの傘下に入り、現在のゴーン社長の下で再建に成功した。私は今でもある週刊誌を読んだ記事を覚えているが日産の組合委員長、塩路は、いまから2,30年前に自家用のクルーザーさえ所有していたのだ。このように大企業の組合がいくらのさばっても、会社が左前になれば組合の力が衰えるし、場合によっては消滅するからまだいい。性質の悪い組合は公務員の組合です。自治労や日教組、彼らはいくら横暴に振舞っても母体が潰れることがない。安心して傍若無人に振舞えるのだ。最近、私のブログに書いた浜教組の違法行為はその典型的な例です。
日本では公務員によるストライキは、法的に禁止されていますが、その公務員による疑似ストライキで有名になったのが、JRの前身、国鉄(日本国有鉄道)の国労(国鉄労働組合)の順法闘争だ。国鉄の社員は公務員だからストができない、ストライキ権を求めてストライキをすることができない。そこで国労が1970年代に考えだしたのが順法闘争という安全サボタージュだ。例えば走行中の電車のはるか先の線路にカラスがいたとしましょう。普通だと電車が近づけば、カラスが逃げます。順法闘争だと「線路上に障害物を発見したから」という理由で速度を極端に落たり、あるいは停止してしまう。急カーブにくれば電車は速度を落とすのは当然ですが、極端に落とす。あるいは線路上の信号の赤の時間をわざと長くしたり、考えられるあらゆる手段を使って順法闘争をした。こうすれば電車は時刻どうおりに動きません。それを通勤通学の時間帯にやられるとどうなるか想像できるでしょう。政府は順法闘争がストライキでないから国労を罰することができません。国労はさんざん乗客に迷惑をかけながら自分たちの目的を達しようとしたのだ。

労組が強くなりすぎると必ず経営不振に陥ります。国鉄も例外ではありません。それどころか国労は、国鉄だから潰れる心配がないためでしょう、傍若無人に振舞う。日教組の教員が校長を吊るし上げるように、組合員が国鉄幹部を吊るし上げるのだ。経営不振で赤字がたまるから、経営改善のため人員削減したり、配置換えをしたり、事業を縮小したり、いろいろ実行しようとするが組合の反対に必ずあい、経営改善が計画通り進みません。そのうちに国鉄の赤字が天文学的な膨大数字になり、もう経営改善は無理と判断。政府は国鉄の分割民営化の実行を決断した。予想どおり国労は猛反発。民営化反対で、公務員に禁止されているストライキをやりだしたのだ。半日スト、24時間スト、48時間スト、これ以上長いストライキはしなかったと思うが、こういう短いストライキを断続的に繰り返すのだ。東京駅に出入りする電車などほとんど全部国鉄です。ストの場合東京駅がどういう状況になるか想像つくでしょう。多くのサラリーマンは、貸布団屋から布団を借りて事務所で寝とまりしたのだ。

国鉄の利用客のほとんどが怒ったのも当然です。皆国鉄分割民営化に大賛成だった。私など自分の身を守ってくれるものなど皆無の一匹狼同然のサラリーマン、国労に対する怒りは中途半端じゃない。国労が象なら私などありだ。象に踏みつけられたままでいてたまるか。国労への反抗だとしてやりだしたのがキセル乗車です。現在は主要な駅の改札は全部自動だからキセルはほとんど不可能です。いずれキセルは死語になるでしょう。当時の改札は駅員によるキップのハサミ切りに定期券は目視。キセルをやる人は多かった。私は定期券による不正乗車をやった。やり方をお話しましょう。私は現在、横浜に住んでいます。私が東京駅の近くの会社に勤めていたとします。正常な乗車は、横浜―東京間の定期券を買って利用することになります。しかし私はそういう買い方をせず、横浜―桜木町間の定期券と東京―神田間の定期券の2枚買い、2枚の定期券を使い分けるのです。出勤する時は、横浜-桜木町間の定期を使い、東京で下車する時は東京-神田間の定期を使って改札を出る。横浜―東京間は完全な無賃乗車です。当然定期代が非常に安くなります。定期入れは二枚必要ですから、識別しやすいように色違いで品質の違う物を用意する。定期券を買う時、半年分とか一年分などの長期間の定期券は買わない。ばれた時の罰金が高くなるからだ。必ずひと月間しか買わない。定期券には絶対自分の名前は書かない。私は阪神タイガースファンなのでタイガースの選手の名前を利用した。掛布だとか岡田などの姓を利用し、名前は勝手に一郎とか二郎とかにしておく。毎月名前を変えるので沢山必要です。タイガースの二軍選手の名前まで利用した。この定期券の不正乗車を10年ぐらいしたと思う。国鉄が分割してJRになってからでもしばらくやっていましたからね。定期券を一枚づつ両足のズボンのポケットに入れておきますが、時々取り出すのを間違える。すなわち東京駅の改札口を通る時、間違えて横浜ー桜木町間の定期を出しそうなります。慣れとは恐ろしいもので、間違えないように定期券の質を変えていますから、手をポケットに入れた瞬間手触りで間違った定期券に触れていることが即座に判断できるのです。国労への怒りの表れの一つとしてキセル乗車した人はけっこういたのではないでしょうか。時々キセル乗車がばれて罰金何百万円などニュース出ます。恐くなってここらで止めようかなと思う反面、捕まえるなら捕まえてみろという気分にもなります。一方キセルのお陰で定期代が浮いた。ひと月5千円ぐらい浮いたような気がするが確かではありません。但し浮いたお金の使い道は確かです。子供のミルク代に使った。私は子供3人いますが、2番目と3番目のミルク代はすべて定期代で浮いたお金です。

ついでにもう少しキセルの話をしましょう。私は当時会社の帰りには、東京駅で始発の電車に乗り座って帰宅していました。従っていつもプラットフォームの一番前に立って毎日同じ時間発の電車が東京駅に入ってくるのを待っていました。ところがしょっちゅう一番前に立っている私の隣に同じ人が肩を並べて電車を待っているのだ。その人は中年のヤクザ風のオッサンでいつもポッケトウィスキーびんを持っていてウィスキーをストレートに飲みながら電車を待っているのだ。ある日オッサンの方から声をかけてきた。「いつも一緒ですな」。これをきっかけにお互い会話するようになった。オッサンは実に愉快な人で話しが退屈しないから乗って一時間はかかる私が下車する辻堂駅まであっというまに着いてしまうのだ。そのオッサンは、なんと静岡県の伊東温泉の伊東から東京の御茶ノ水まで3時間かけて通勤していたのです。或る時キセルの話が話題になった時、オッサンは、こっそり御茶ノ水―東京間の定期券と伊東から次の駅のなんとかという駅名の定期券、二枚を見せるではありませんか、伊東―東京間は完全に無賃乗車、キセルだったのです。「途中改札に来ませんか」と聞くと「行きは絶対にこない。帰りは平塚、大磯あたり過ぎると、乗客が極端に少なくなるから時々やってくることがある。だからその対策として始発の東京駅乗るときから、電車の中央に座る。改札はいきなり真ん中から始まらない。かならず左右どちらかから始まる。それが改札に備える時間的余裕を与えるのだ。その他必ずトイレのある車両に座る。トイレに隠れることもできるからだ。私が始発の東京駅で無意識にオッサンと一緒にプラットフォームに立っていた場所は、車両の中央であり、トイレがある車両だったのだ。その他に改札を避ける方法としては、状況次第で次の停車駅で一旦降り、改札の済んだ車両に乗り換えるのだ。オッサンは、「俺は生活に困ってキセルをしているのではない。国労に腹が立つのだ。ストライキなどでさんざん乗客に迷惑かけているのだ。全国紙に乗客に謝罪する広告を載せろ」と言うのだ。全く同感だった。「二人はキセル愛好者どうしですな」などと言って、私とオッサンとはさらに親しくなり私的にもつきあうようになった。オッサンと始めて会話を交わしところ、オッサンが言った言葉で今も覚えている言葉がある。オッサンは「俺には二人の娘がいる。一人は葵(アオイ)で、もう一人は帝(ミカド)だ」。

私がうっかりクラブやスナックの呼び名のようですねてと言うと、「バカ言え、葵(アオイ)は、徳川家の御紋だぞ、帝(ミカド)は天子、天皇の尊称だ。二人とも高貴な娘なのだ」数年前オッサンは、亡くなってしまった。娘の葵(アオイ)さんからの手紙によると、晩年、オッサンは私の年賀状を読むのを楽しみにしていたそうだ。キセルがとりもった縁もえん(煙)と消えてしまった。

国鉄分割民営化計画は、結局JRとして六つの地域別の旅客鉄道会社と一つの貨物鉄道会社に分割して民営化された。正式に発足したのが昭和62(1987)4月年1日です。いまから23年前のことだ。この時JRは、国鉄時代の全職員27万7千人を20万人までに削減。残りの7万7千人は、公的機関や民間企業に就職先を求めましたが、そのうち2万3千660人が再就職先を見つけることができなかった。国鉄清算事業団は、この2万3千660人全員を3年間という条件付で採用した。その3年の間に、「週刊新潮」(平成22年4月22日)によると、手厚い雇用対策を講じたと報じています。全国で3万件以上の再就職先を確保し、一人平均74回の就職相談や34回の就職斡旋もした。さらにJRも新たに2300人の追加採用を決めたのです。それでも1047人は仕事もみつからなかった。この最後に残った1047人は、どこも採用したくない人間ばかりが残っているのだ。ごね得とばかりどんな就職斡旋にも耳をかさず、あるいは国鉄時代の組合活動で停職6か月以上の処分を受けていたり、あるいは2回以上の停職処分を受けたりというような経歴の持ち主した人たちだ。彼らは、自分たちをJRに復職させないのは、組合差別の不当労働行為だと政府を裁判に訴えた。その後紆余曲折を経て昨年民主党の鳩山政権が誕生、政府との和解の気運が生まれた。鳩山政権は、最高裁に和解を提案、6月28日に最高裁で和解が成立した。1047人のうち904人に一人平均2200万円、総額199億円を政府が払うのだ、すなわち国民の税金が使われるのだ。和解を提案した時、鳩山首相は「人道上の問題であって、20年以上苦しんできた方がおられるなかで、新政権として前進した」と語っているのだ。

鳩山のバカ、アホ、ノータリンふざけるなと言いたい。国鉄が分割民営化した時点で辞めさせられた職員全員は、もう公務員ではなく民間人になっていることさえもからないのなか。どうして政府がその人たちの面倒を見なければならないのか。それもこの財政難のおり一人2200万円の大金を与えねばならないのか。首になった人たちは、JRに再就職したり、他の職業についたりして苦労してきているのだ。この残った1000人あまりの連中は、最後までゴネたのだ。まさにゴネ得とはこのこと。中には国鉄時代組合活動が度が過ぎて停職6ヶ月の処分を受けたり、停職処分を2度経験したりしてどこからも採用の口がかからないような者までいるのだ。

国鉄時代の労働組合は、国労(国鉄労働組合)と呼んでいたが、国鉄が民営化された後も組合の名前を変えず「国労」とそのまま使っています。英語名は、National Railway Workers
Union。JRの組合員は、いまだに国鉄労働組合の気分でいるのだろう。この国労が最後まで再就職できずに残った1000人あまりを徹底的に援助してきた。労働組合は、民主党の支持母体、だから鳩山は組合と妥協せざるをえなかったのだ。ついでに書いておきますが、国鉄分割民営化時点での累積赤字37兆1千億円。利息を払うだけでも大変だ。37兆円という赤字がどれほど巨大か想像できますか。今年の日本の防衛予算は、4兆8564億円です。私企業では、37兆円超えるというような天文学的数字の赤字は絶対に出せません。そうなる前に倒産しています。国営でしかも公務員の労組だからできる破廉恥経営なのです。公務員の組合ほど国民の害になる労組はありません。民営化後23年たっても赤字が払いきれていません。毎年1兆円ぐらい国家予算で払っていると言われています。政府も隠してはっきりいいません。国民も忘れっぽいから、借金は、もうとっくに払い終えたのだろうと思ってしまっているのだ。

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